肝胆膵外科

肝臓外科

原発性肝癌・転移性肝癌の外科治療

1. 原発性肝癌(肝細胞癌)

I. 肝細胞癌の外科治療

 岡山大学肝胆膵外科においては、年間100~110例の肝切除手術が行われています。肝切除技術の進歩、周術期管理の向上によって、最近10年間の肝切除における手術死亡率は0.5%であり、肝切除は極めて安全な手術であるということができます。
  肝切除術の半数は肝細胞由来の肝細胞癌で、大部分がC型・B型肝炎などのウイルスが原因で発生します。肝細胞癌の治療が難しいのは、治療対象臓器である肝臓そのものが病気であり、ウイルスの活動や治療のダメージによっては肝臓全体の機能が低下する可能性があり、他の臓器に発生する癌と異なり、単に腫瘍を治療するということに専念しさえすればよいのではないということです。

  現在、肝細胞癌治療には外科切除・ラジオ波焼灼療法・マイクロ波凝固療法、肝動脈塞栓化学療法などの様々な治療があります。これらの治療のいずれを選択すべきかについては、肝臓の予備能と腫瘍進行度という2つの因子をのせた天秤の針がどこを指し示すかで医学的に決まるべきものであって、いくつかの治療法から患者さまに好みのものを選んで頂くということはありません。なぜなら、これらの治療法はその治療効果が異なるからであり、患者さまに優しい治療が必ずしもベストの治療となるわけではないからです。岡山大学病院では、患者さま個々の治療方針につき、我々肝胆膵外科だけでなく、他の治療法を担う消化器内科、放射線科との協議(肝胆膵カンファレンス 毎週木曜日19:00~)により治療法を検討し、岡山大学病院の総意として個々の患者さまにベストとなる治療方針が決定されます。従って、肝胆膵外科に手術目的で紹介頂いた患者様でも肝胆膵カンファレンスの結果次第では、消化器内科にてラジオ波焼灼療法、あるいは放射線科にて肝動脈塞栓術で治療して頂くこともあれば、その逆もあり得ます。

II. 肝切除の重要性

 肝臓には、腸から栄養を運ぶ門脈と呼ばれる血管と肝臓の骨組みを養う肝動脈という2系統の血管が流れ込み、類洞と呼ばれるプールで混ざり合います。そこから肝静脈によって心臓に運ばれます。癌病巣はこの類洞と呼ばれる部分で大きくなり、出口である肝静脈をふさぎます。しかし、癌そのものは100%動脈から栄養されているので、動脈血は圧力も高く、出口がなくなってどんどん流れ込んできます。そのうちにこぼれ落ちた腫瘍細胞を含んだ動脈血は門脈を逆流し始め、門脈の枝を伝わって離れた場所に転移していきます。
  細胞癌の治療では、最初にできた腫瘍を徹底的に治療し、局所再発・転移再発を防ぐことが極めて重要です。先に述べた治療法のうちで、最も治療効果の高い治療法は肝切除術です。肝切除が肝細胞癌の治療として最も有効である理由は、腫瘍の完全切除のみならず転移経路を含めた支配血管領域ごと摘出することができる点にあります。私どもが基本手術方針とする系統的肝切除では、癌病巣を含め転移経路となる門脈領域までを摘出しますので、ラジオ波焼灼・マイクロ波凝固などと異なり、局所再発(治療部位の近傍に再発)の危険性は極めて低く、診断段階では画像的にも肉眼的にも認識できないような、ごく小さな近傍の転移巣を取り除くことができるのです。

III. 原発性肝癌の切除成績

 1997年2月~2007年9月まで10年間の肝細胞癌に対する肝切除348症例の切除成績を示します。当科では肝切除に伴い、いかに小範囲の切除であっても転移経路を考慮して血管の分岐単位で切除する(系統的切除)方法をとっており、部分切除は18.6%にとどまり、81.4%は亜区域以上の系統的切除を行っています。肝癌の進行度はStage I(腫瘍が単発で2cm以下)41例、II 129例、III 113例、IVA 59例、IVB 6例でした。
 腫瘍進行度を度外視した肝癌手術例全体の生存曲線を示します(左下図)。当科での肝切除後の2年・5年・10年生存率は、87.6%, 62.9%, 45.2%でした(全国集計での肝細胞癌に対する肝切除の5年生存率54.2%、10年生存率29.0% ~日本肝癌研究会 第18回全国原発性肝癌追跡調査報告~)。
 また、進行度 (Stage)別に生存曲線を描いてみますと、5年生存率はそれぞれStage I 76.3%、Stage II 70.9%、Stage III 66.6%、Stage IVA 27.0%でありました(右下図)。

 

 

 さまざまな非手術的治療法が開発された今日においても、肝臓治療における外科手術の優位性は揺らぐことはないと言えましょう。肝細胞癌の治療においては、系統的肝切除を第一方針とした積極的手術療法は有効な治療手段であり、比較的早期の癌はもちろんのこと、高度進行症例であっても、血行再建を伴う肝切除や補助療法を付加した集学的治療で良好な予後が期待できます。

 

2. 転移性肝癌

 当科で行われる肝切除のうち約20%は転移性肝癌、特に結腸・直腸癌からの肝転移に対して行われています。1997年3月~2008年10月までの大腸癌肝転移97例(多回切除を含む111切除例)について調べてみました。肝切除後の5年生存率:52.3%, 10年生存率41.4%でした。

 

 多くの患者さまの予後の解析により、肝転移を切除した後に残肝に再々発を来した場合であっても、積極的再肝切除によって癌病巣の摘出と病勢制御が十分に可能であり、生命予後に寄与することがわかっています。大腸癌の肝転移であっても、半数の患者で根治が得られるとさえ言えます。しかし肝臓以外の臓器に再々発してきた患者さまの予後が不良であることが問題視されております。近年、FOLFOXなど奏功率の高い大腸癌化学療法を補助療法として組み合わせていくことで、肝切除後の再発予防効果が確認されており、今後の治療予後の向上が期待されています。

 更に一般的に切除不能とされる下大静脈などの大血管浸潤を有するような転移性肝癌であっても、血行再建を伴う積極的肝切除で病巣の切除が可能となることがありますし、両葉に多発するような進行癌であっても、日々進歩を遂げる化学療法分野で注目される分子標的治療剤を組み合わせた術前化学療法で腫瘍縮小、病勢の押さえ込みが可能となり、肝切除に持ち込める症例が増えつつあることも、今後の転移性肝癌治療の更なる進歩に向けて光明が差しています。

 

 

 

胆膵外科

 当科の胆道、膵臓外科は、難治性癌である胆道癌(胆管癌、胆嚢癌、十二指腸乳頭部癌)、膵臓癌に対して消化器内科、放射線科との連携診療により術前診断の精度向上、治療方針の決定、手術を中心とした治療を行っています。
 局所進行癌に対しては癌遺残のない根治手術を目指して積極的に門脈、動脈合併切除、血行再建を施行しています。胆道癌で大きく肝臓を摘出する必要のある患者さんには、放射線科と協力して摘出する肝臓側の門脈を塞栓することにより小さくして、残る側の肝蔵を大きくした後に安全に手術をする方法を導入しています。また術後補助化学療法としてはジェムザール、TS-1を中心とした術後補助化学療法を推進しています。
 膵頭部領域の悪性腫瘍に対する膵頭十二指腸切除術をはじめ、当科における胆道、膵臓外科手術症例は年々増加しています。膵頭十二指腸切除術もここ10年での在院死亡率は0.4%であり、血管床への大網弁被覆による仮性動脈瘤発症防止策の開発など安全に手術を施行できる手術手技の研鑽と早期退院を目指した術後管理に努めています。また、慢性膵炎の治療も消化器内科とともに取り組んでおり、内科的治療でコントロール不能な疼痛を伴う場合には、膵管と空腸を吻合して膵管の減圧を行う手術などの外科的治療も行っています。
 胆道、膵臓外科の手術は長時間におよぶ手術が多く合併症が起こることもございますので、患者さん、そのご家族と医療スタッフとの信頼関係の構築が重要と考え、術前から術後退院までの治療方針、内容、結果の説明も懇切丁寧に行っています。

 

移植外科

肝臓移植と肝癌治療

 

 進行した肝臓病の治療手段として肝臓移植が登場したのは、1963年です。しかし約20年間は成績が悪く、実験的医療の域を脱し切れませんでした。この画期的治療を飛躍させたのは主に免疫学、主として新たな免疫抑制剤の開発でした。サイクロスポリン(さらにプログラフ)の開発により1980年代前半に臨床的に信頼性のある治療として、全世界の施設で行われるようになり、移植を受ける患者さまの数も増加しました。
 肝移植には、脳死肝移植と生体肝移植があり、欧米では前者が中心でしたが、待機期間中に亡くなる方も少なくないため、最近では欧米でも生体肝移植が増加しています。日本の脳死肝移植は1997年に法的に可能となり、待機登録(有料)が可能ですが、保険適応されなかったこと(現在は保険適応されますがすべてではありません。)、脳死からの臓器提供が少ないこと、患者さま自らが登録順位を知ることはできないこと、緊急手術であることなどが、残念ながら十分普及しているとはいい難い状況です。しかし、2006年4月から脳死肝移植にも保険適応が拡大され、2010年7月からは脳死移植法改正案が施行されましたので、移植数の増加が見込まれます。なお、当科は脳死肝移植認定13施設の1つです。
 一方日本では、1989年に生体肝移植が始まり、2004年1月の保険適応拡大もあいまって着実に移植を受けられる患者さまは増加しています。 近年は年間450名強、1989年以来累積5000名以上の患者さまが全国で生体肝移植を受けられています。
 当科でも1996年に第1例目の患者さまに生体肝移植を行って以来、2004年以降は年間20~30名の患者さまの生体肝移植を行うまでに日常化し、良好な成績を得ています。

岡山大学肝胆膵外科における肝移植成績

 1996年8月以降2010年7月末までの生体肝移植247例の移植成績をご紹介します。
 当科の生体肝移植プログラムは、 1996 年8月に始まり、今年でちょうど14年に当たります。年間移植数は次第に増加し2005年の年間移植症例数は37例におよびました。小児の移植対象疾患および成人の胆汁うっ滞性肝硬変の頻度はほぼ固定されていますので、増加の主体が肝臓癌を含む成人のPNC(壊死後肝硬変)であることがわかります。肝移植においての当科の技術的革新がおこった時点を赤の矢印で示しています(下図)。

 患者さまの分布を示します。岡山県(50%)を筆頭に、中四国圏内から幅広く患者さまが治療を受けに来られています。なかには大阪・愛知や沖縄などご遠方の患者さまもおられます。

 肝臓癌を中心とした成人の症例増加に伴い全体の84%が成人患者さまです。
 ドナーに行われる肝切除術式は、成人症例が多い関係上右葉切除(45%)と拡大左葉切除(29%)が多くなっています。また、肝臓の左右の比率が極端に右に偏ったドナーさんからは、後区域(右葉の後ろ半分)を摘出し移植する方法もあります。

 小児および成人の累積生存率はそれぞれ83%,80%と良好な成績をおさめています。とくに合併症の発生しやすい成人生体肝移植の1年生存率は86%であり、卓越したものと考えています。

 移植を受けることとなった元々の疾患(原疾患)はその半分近くがウイルス性・アルコール性・脂肪性などの壊死後肝硬変で占められています。つづいて胆汁うっ滞性肝硬変が1/4を、劇症肝炎が13%をそれぞれ占めています。

 原疾患別の生存曲線においては、胆道閉鎖症の生存率は100%、原発性胆汁性肝硬変は83.2%の生存率を示しています。壊死後肝硬変では、重症例や肝癌合併が多く含まれていますが、その累積生存率は75.7%と良好です。
 以上、この14年間の肝移植の簡単なまとめを提示してみましたので、受診の際のご参考にしていただければ幸いです。

肝移植を受けられる対象患者さまについて

 肝不全で、余命が1年以内と危惧される場合や、再発しにくい進行度の肝臓癌にもかかわらず肝機能の問題で切除できない場合、肝臓が原因で他臓器の機能不全を来す場合には、肝移植の適応がある(対象となる)と考えられます。ただし、高齢者(65歳以下が望ましい)、肝臓以外の癌の合併、胆道以外の感染症の合併(たとえば髄膜炎、敗血症など)、進行した心肺疾患などは移植適応から除外されます。
 現在肝移植の適応(脳死も生体も同じです)と考えられる疾患は以下の通りです。

「診療報酬(平成6年厚生省告示第54号)および老人診療報酬点数表
(平成6年厚生省告示第72号)の一部改正に伴う実施上の留意事項についての通達」

対象疾患は、先天性胆道閉鎖症、進行性肝内胆汁うっ滞症(原発性胆汁性肝硬変と原発性硬化性胆管炎を含む)、アラジール症候群、バッドキアリー症候群、先天性代謝性疾患(家族性ポリアミロイドニュウロパチーを含む)、多発嚢胞肝、カロリ病、肝硬変(非代償期)および劇症肝炎(ウイルス肝炎、自己免疫性、薬剤性、成因不明を含む)である。なお、肝硬変に肝細胞癌を合併している場合には、遠隔転移と血管侵襲を認めないもので、肝内に径5cm以下1個、または径3cm以下3個以内が存在する場合に限る

 これを当科にて移植を受けた、あるいは待機されている方の病気にあてはめて分かりやすくまとめますと

  • 胆汁うっ滞性肝硬変
    胆道閉鎖症、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、アラジール症候群など
  • 劇症肝不全
    ウイルス性劇症肝炎、原因不明の劇症肝炎、薬剤性劇症肝不全など
  • ウイルス性・その他の肝硬変
    B型・C型肝硬変、原因不明の肝硬変、脂肪性肝硬変、自己免疫性肝炎、アルコール性肝硬変など
  • 先天性代謝異常
    ウイルソン病、 シトルリン血症、家族性アミロイドポリニューロパチーなど
    肝血管の異常に起因する肝硬変:バッドキアリ症候群、オスラー・ウェーバー症候群など
  • 肝腫瘍
    過度に進行していない肝癌、肝血管腫に伴う肝不全など
  • その他の先天異常
    カロリー病、多発性嚢胞肝など

 なお、疾患の進行や移植のタイミングは千差万別であり、生存率の予後予測から移植時期を割り出せる疾患から1分1秒を争うものまでさまざまですので、是非お早めにご相談ください。
 肝癌を伴っている場合も、肝不全でなければ保険適応にならず、また、肝癌に関して遠隔転移と血管侵襲を認めないもので、肝内に径5cm以下1個、または径3cm以下3個以内をみたしていなければ、いままでどおり自費移植となります。肝癌に対しては対象患者も多く、この点はかなり厳密に適応されますので、ご注意のほどよろしくお願い申し上げます。

 

生体肝移植における臓器提供者(ドナー)の条件

岡山大学肝胆膵外科におけるドナーの条件は以下に示すようなものです。

#1)健康体が原則で、肝切除という手術ならびに精神的ストレスに耐えられる心肺機能および精神的安定が必要です。
#2)原則的に成人であることが必要です。60歳以下としている理由の一つは、ドナーの手術(肝切除)が身体に及ぼす危険が大きくならない年齢であることと、もう一つは60歳を超えたドナーから提供された肝臓を移植した場合、レシピエントの死亡率が高くなるということがわかってきたためです。
#3) ABO血液型が一致もしくは適合ということは、平たくいえば輸血できる組み合わせであるということです(図1)。しかし劇症肝炎などで一刻を争う場合、あるいは2歳以下の免疫力が弱く不適合でも生着率が高いと判断される場合は、特殊な処置をして移植する場合もあります。

#4)当科でのドナーの続柄は、レシピエントの3親等以内の血族もしくは配偶者としております。これを超えるものにつきましては、日本移植学会の指針の範囲内で個々の症例につき、本学倫理委員会の承認を得て、これまでに2例おこなわれています。
#5) B型肝炎・C型肝炎・AIDSウイルスなどが移植肝を介してレシピエントに感染しないこと。具体的にはHBs抗原、HBVDNA、HBc抗原200倍希釈のいずれもが陰性、HCV抗体陰性、HIV抗体陰性であることが必要です。
#6)ドナー肝が強い脂肪肝の場合は、脳死肝移植においては移植後肝不全の発生頻度が高いことが分かっており臓器提供を控えます。生体ドナーにおいては、ある程度の脂肪肝があっても術前のダイエットにより、これを改善することができますが、障害が強い場合にはドナー・レシピエント両者に危険が及ぶ可能性があることから、提供を断念いただく場合もあります。
#7)生体肝移植手術において最優先課題はドナーの安全確保です。特に成人生体肝移植においては提供される肝臓が小児に比べ大きいため、CTなどの画像検査によってあらかじめ摘出(提供)可能な肝臓の容積を測定し、ドナー肝の右半分か左半分を提供するかを決定します。提供される肝臓がレシピエントの体重の0.8%以上あれば肝移植の安全性がより高くなることがわかっています。しかし私どもは、ドナーの安全性確保のためには摘出肝の比率が全体の65%以下であることが必要であると考えており、このような場合は提供される肝臓の比率が0.8%以下でも、ドナーの安全性の方が優先されます。

 

再発性疾患に対して肝移植を受けられる患者さまへ

 原疾患の重症度によりますが、移植手術そのものには10%前後の術関連死亡のリスクがあります。移植後も拒絶や感染のリスクがあり免疫抑制剤は厳密に、一生内服していただく必要があります。移植の対象疾患のなかには移植肝生着後も、さらに原疾患の再発により患者さまの生命を脅かしうる再発しやすい疾患がいくつかあります。

  1. B型ウイルス性肝硬変に対する生体肝移植と肝炎再発
    B型ウイルス性肝硬変が原因で、末期肝不全になっておられる患者さまへの肝移植は、移植肝へのB型肝炎の再発が原因で長い間移植成績が不良でした。これは術中から投与される免疫抑制剤(拒絶を防ぐ薬)によって血液中に残ったウイルスの活動性が高まり、何も予防的措置が取られなければ劇症化したり、あるいは急速に進む肝硬変のために3年以内に再移植が必要な状態となっていたからです。しかしラミブジンという抗ウィルス剤の登場と抗B型肝炎ウイルスヒト免疫グロブリン(HBIGといいます)の組み合わせにより、このやっかいな移植肝へのB型肝炎の再発は80%以上抑えられるようになり、現在では安全な移植手術となりました。
  2. C型ウイルス性肝硬変に対する生体肝移植と肝炎再発
    現在のところ、C型肝炎ウイルスの移植肝再発に関してはB型のそれほど有力な治療方法はありません(新発売の抗ウイルス剤・リバビリンやPEG-インターフェロンに期待が寄せられています)。C型肝炎ウイルスは移植した肝臓に100%再発します。しかし、C型肝炎ウイルスによる移植後肝炎の進行はB型の再発に比べはるかにゆっくりしたものであり、肝硬変の完成までに8~10年を要すると考えられています。移植が必要なC型末期肝硬変患者さまの年齢が50歳代後半から60歳代前半ですので、肝移植が成功すれば約10年の延命が得られるということになります。C型肝炎ウイルスの移植肝再発は、初期には拒絶や胆汁うっ滞などと見分けがつきにくいため、非常に診断が難しく、診断までに何度かの肝生検を要する場合があります。
  3. 原発性肝癌に対する肝移植と肝癌再発
    肝移植は、原発性肝癌(いわゆる肝臓癌)に対しても、その有力な治療法の1つであり、当科でも積極的に肝移植を行っています。しかしすべての肝癌が適応となるわけではありませんし、近親者にドナーとなる意志をお持ちの型がおられるかどうかや、肝臓癌の進行度などを考慮して当院の適応判定委員会の承認が得られた方のみがレシピエントとなることができるのです。
    ひと口に肝臓癌といいましても、移植を行った成績の良好なものはどのような癌かということは、イタリアのグループの代表的研究で分かってきております。それは単発(1ヶだけ)であれば直径5cm以下、多発であってもそれぞれが3cm以下で3ヶまでにとどまれば移植後の5年生存率が65%(脳死移植のデータです)位あります。生体肝移植の場合もこれをあくまで目安として移植の適否を判定しますが、必ずしもこの基準が適応限界というわけではありません。
    しかし明らかに肝外進展があるもの、血管内に出ているもの、他臓器転移のあるものなどでは、肝臓以外の部分や血液中に生きた癌細胞が残っている可能性が高く、早期再発を起こし、ドナーに傷をつけただけに終わることもありますので、お断りする場合が多いのです。

 

外来受診をご希望の患者さま・紹介医の先生方へ

 移植外来の受診を希望される患者さまは、できればご紹介の先生からのできるだけ詳しい経過ならびにCTなどの画像情報をご持参いただき、毎週金曜日午前中の八木孝仁教授の外来にお越しください。肝胆膵外科の外来は月・水も受け付けますが、月水曜日は移植以外の肝胆膵疾患の患者さまで大変混み合いますので十分お時間のとれる金曜日をお勧めします。

連絡先
岡山大学病院 肝胆膵外科 教授・科長 八木孝仁
〒700-8558 岡山市北区鹿田町2-5-1
地域医療連携: 086-223-7151  移植コーディネーター室: 086-235-6965
肝胆膵外科外来: 086-235-7928
E-mail: yoshi-m2@cc.okayama-u.ac.jp

 

膵島移植

最新情報

2011年10月4日、全国組織である日本膵・膵島移植研究会より岡山大学病院が膵島移植の施設認定を受けました。現在、岡山大学病院で膵島移植の適応患者登録を行っております。

 

膵島移植とは

糖尿病患者(特に1型)に対して行われる治療法で、提供されたドナー膵からインスリンを分泌する膵島組織を分離し移植します。移植方法は、局所麻酔下に門脈に管(カテーテル)を挿入し、点滴の要領で分離膵島を注入します。大がかりな手術を必要とせず、患者にとって身体的負担が少ない治療法です。移植膵島は門脈を経由して肝臓に生着し、肝臓からインスリンを分泌するようになります。
欠点として免疫抑制剤を飲む必要があること、インスリン離脱を目標とした場合は複数回の移植が通常必要であることなどがあげられます。

 

膵島移植適応基準

岡山大学は全国組織である膵・膵島移植研究会の膵島移植班の一員として膵島移植を実施しています。膵・膵島移植研究会で定められている適応基準は以下のとおりです。

適応

  1. 内因性インスリンが著しく低下し,インスリン治療を必要とする。
  2. 糖尿病専門医の治療努力によっても,血糖コントロールが困難
  3. 原則として75才以下
  4. 膵臓移植,膵島移植につき説明し,膵島移植に関して,本人,家族,主治医の同意が得られている.
  5. 発症後5年以上経過していること

禁忌

  1. 重度の心疾患,肝疾患(心移植または肝移植と同時に行う場合には考慮する)
  2. アルコール中毒
  3. 感染症
  4. 悪性腫瘍(5年以内に既往がないこと)
  5. 重症肥満(BMI 25以上)
  6. 未処置の網膜症(ただし失明例は除く)
  7. その他移植に適さないもの

岡山大学で膵島移植を受けるには

膵島移植に関するご質問やご予約に関しては下記までご連絡ください。

岡山大学移植コーディネーター室
〒700-8558 岡山市北区鹿田町2-5-1
岡山大学病院 移植コーディネーター室「膵島移植担当」 宛
TEL: 086-235-6965
FAX: 086-235-7631

 

岡山大学受診から移植実施までの流れ

膵島移植を受けるには、全国組織である膵・膵島移植研究会による適応判定を受ける必要があります。適応判定を受けたのち、ドナーが出るまでの期間待機となり、ドナー発生時に移植希望の再確認を行った後、移植を実施することになります。以下が詳しい流れです。

  1. 岡山大学移植コーディネーター室へ連絡
    上記のいずれかの連絡方法で、移植コーディネーター室へ連絡を取ってください。コーディネーターからいくつかの質問がされ、移植適応がない場合はこの地点でそのようにお伝えします。適応がある可能性が高い場合、もしくはあるかどうかの判断がつかない場合、主治医の先生に追加検査のお願いをしたり、当院で検査を実施したりすることになります。適応に関しては、「膵島移植適応基準」をご参照ください。
  2. 膵島移植外来予約
    移植適応の可能性が高い場合は、移植コーディネーター室を通して膵島移植外来受診の予約を行ってください。
  3. 膵島移植外来受診、申請書類作成
    主治医からの紹介状を持って岡山大学病院を受診してください。
    膵島移植医、糖尿病専門医、膵島移植コーディネーターが同席して、膵島移植の説明を行います。
    説明が終了後、移植同意書などの書類にサインしていただきます。
    われわれのほうで膵島移植適応判定申請書を作成し、膵・膵島移植研究会に提出します。同研究会の適応判定委員による心停止ドナー膵島移植のための適応判定が行われます。
    適応判定委員による適応判定には通常3~4ヶ月が必要です。
  4. 膵島移植待機中
    移植適応ありと判断されると、その日から膵島移植待機中となります。
    待機期間中は定期的に歯科受診、眼科受診をしてください。ドナー発生時に虫歯(感染症)や未処置の網膜症がある場合、移植が受けられなくなります。
    ドナーが発生した場合、大学病院から突然、移植の連絡が入りますので、いつでも連絡が取れるような体制を作っておいてください(休日昼夜を問いません)。
  5. 年次更新手続き
    登録後1年が経過する場合、膵島移植班事務局に対しての患者様の状態についての情報の更新の必要があります。年次更新申請書と申し込み用紙を岡山大学病院より患者様ご本人に郵送いたします。地元病院あるいは岡山大学病院にて申請更新のため必要な検査を受けて下さい。
  6. 移植実施当日
    膵島移植医師あるいはコーディネーターと病院到着時間などを相談しながら来院して下さい。大学病院入院後、必要な検査および点滴を受けて頂きます。移植可能と判断された場合、放射線科透視室にて移植を実施します。 膵島分離の結果、分離膵島の収量や質で移植できない場合がございますので予めご了承ください。

スタッフ紹介

問い合わせ

岡山大学移植コーディネーター室
〒700-8558 岡山市北区鹿田町2-5-1
岡山大学病院 移植コーディネーター室「膵島移植担当」 宛
TEL: 086-235-6965
FAX: 086-235-7631